ブロッキングは、取り組みの遅れが各国から批判されてきた日本の児童ポルノ対策の目玉施策として、総務、警察を含む関係7省庁で協議、今月21日の基本案策定を目指していた。
ところが、その手法をめぐり、警察、総務両省庁のすりあわせがつかず、省庁間の協議は難航。「水面下でぎりぎりの折衝が続けられている」(内閣府関係者)状況となっている。
総務省は、ブロッキングを「通信の秘密を侵害する違法行為」と位置づけてきた。そのため実施にあたっては、「違法行為を免除する根拠付けが必要」とし、「サーバーが海外にあるなど、警察の捜査が及ばないケース(緊急避難)に限る」-といった立場から基本案を準備してきた。
大手接続事業者4社を集めて総務省で開いた会合で、同省の内藤正光副大臣は、ブロッキングを今年度中に条件付きで導入する方針を示す一方、「捜査や削除など、ほかの方法では児童の権利を十分に保護することができないこと」-など4つの条件を明示した。
これに対して警察庁は、「児童ポルノ禁止法に規定された違法な画像」であれば(1)サイト上で発見次第ブロッキングする(2)サーバーの所在が国内外どこにあろうと適用する-の2点を求めている。
警察庁幹部は「画像が流れると完全に除去するのが極めて困難で、撮影された児童は半永久的に被害者として傷つけられる」と指摘。その上で、総務省の見解について「すでに捜査に着手していたり、接続事業者などに削除を要請している場合には、適用できないことになる。検挙や削除までに早くても数週間を要するのが現実で、速やかに遮断できなければ、対策の実効性が確保できない」と主張している。
対策案をとりまとめる内閣府関係者は「両者が折り合うのか、先行きは見えない」と憂慮している。
インターネット接続業者は、日本インターネットプロバイダー協会が18日、ブロッキングについて「好ましいものではないが、やむを得ない」と容認する姿勢を示した。しかし、通信の秘密の保護などの観点から「規制が児童ポルノ以外に及ばない仕組みが必要」という声が強い。
ニフティの丸橋透法務部長は今月、ネットによる人権侵害をテーマにした催しの席上、「(さまざまなサイトの入り口の)ポータルサイトがブロッキングの対象になったら、問題ないサイトも見られなくなる危険がある」と懸念を示した。
別の関係者は「サイトのごく一部に児童ポルノが含まれる場合、そのサイト自体を遮断すれば表現の自由も問われてしまう。ブロッキングのリストは業界が作るのは無理で、行政が社会的理解を取り付けてほしい」とも訴えている。
■ブロッキング(強制遮断) ネット接続事業者(プロバイダー)が、サイトを閲覧しているユーザーに了解を得ることなく、特定のサイトへの接続を遮断すること。第三者であるプロバイダーが接続先を特定するため、憲法21条で定める「通信の秘密」を侵害するとの見解がある。英国などで導入されている。事業者が設備を整える必要があり、費用負担が生じる。
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